苦手が「できた!」に変わる瞬間。
夢門塾相生が大切にする、個々に合わせた療育グッズと関わり方

手作り跳び箱に挑戦。「できた!」の瞬間を積み重ねます
子どもの発達や特性に合わせた支援を行う児童発達支援事業所。その現場では、どのような工夫が行われているのでしょうか。今回は「児童発達支援 夢門塾相生」を取材。「個々に合わせた療育グッズ」という切り口から、子ども一人ひとりの成長に合わせた支援の工夫についてお話を聞きました。
夢門塾相生で活躍する「療育グッズ」

机上課題から運動まで。子どもの困り感や発達段階に合わせた手作りの療育グッズ
夢門塾相生では、机上課題から運動まで、子どもの困り感や発達段階に合わせてさまざまな療育グッズを活用しています。現場で実際に使われている5つのグッズと、その取り組みを教えていただきました。
①話の流れや順番を整理する「順序カード」
話を順序立てて伝えることや、図・イラストで流れを理解するのが苦手な子ども向けのグッズです。

動作の順序を並べ替えるカード教材「順序カード」
バラバラにしたカードを正しい順番に並べ替えたり、あえて間違えた順番を修正してもらったりすることで、動作の順序を理解できているか、経験したことがあるのか、言葉にして説明ができるのかなど発達段階を確認。順序を知ることから、言葉で説明する練習まで幅広く活用されています。
②手先と視覚の連動を育む「ポンポン」

トングでポンポンをつまみ、台紙と同じ色へ移動します
お箸が苦手、集中が続かない、見比べが苦手な子ども向けのグッズです。
トングや補助箸、普通のお箸など、発達段階に合わせた道具を使って、ケース内の台紙と同じ色にポンポンを移動させます。台紙と手元を見比べながら作業することで、目と手の協調運動(見比べ)の練習にもつなげています。
③両手を器用に使う感覚をつかむ「右手左手」

左右の手で同時にタッチ。両手を使う感覚を育みます
ハサミなど両手を使う動作が苦手な子どもに向けたグッズです。
並んだマークを左右の手で同時にタッチ。同じ色を同じタイミングでタッチするよう促し、左右の手元をよく見る練習を行います。発達段階に合わせて右手のマークを徐々に小さくしていきます。
④楽しみながら概念を広げる「これは何色」

白黒カードを対応する色の上に分類する「これは何色」
色の名前や物と色の組み合わせが曖昧な子どもに向けたグッズです。
白黒のイラストカードを、対応する色の紙の上に分類します。物の名前や色を確認しながら進め、「他にどんな色を知っている?」「どんな物がある?」と日常会話へ展開することで、認識できる概念を広げていきます。
⑤恐怖心を減らして段階を踏める「手作り跳び箱(小)」

「またぐ→上に座る→跳んで座る」とスモールステップで進みます
跳び箱への恐怖心がある子や、手をつく・ジャンプするといった基礎動作が苦手な子どもに向けた運動グッズです。
カラフルな見た目と手をついてまたげるコンパクトなサイズで恐怖心を軽減。「またぐ → 上に座る → 跳んで座る → 跳び越える」とスモールステップで練習を進めます。複数並べることで、1個目がうまくいかなくても「2個目を頑張ろう!」と、子どもの意欲を維持できる工夫も凝らされています。
個々の「困り感」にフィットさせるグッズ選び

足跡の上を歩く運動遊び。発達段階に合わせて内容を調整します
夢門塾相生が療育グッズを取り入れる目的は、一人ひとりの発達や興味に合わせて活動内容を柔軟に調整するためです。さまざまなグッズを通して楽しみながら成功体験を積み重ね、主体的に活動へ取り組めるよう支援しています。

ボタンやスナップの手作りグッズ。一人の困り感から生まれた道具です
選定にあたっては、現在夢門塾相生を利用している子どもたちの姿に当てはめて考えることが多いといいます。一人の困り感に合わせて作った道具が、類似した悩みを持つ他の子の支援に役立つことも少なくありません。
また「グッズの使い方は一つではない」と考え、個々に合わせて応用できる物を選ぶようにしています。
あえて見守る。「問いかけ」から広がる発想力

「これ、どうやって使う?」の問いかけから、自由な発想が広がります
支援グッズを導入する際、基本的には使い方を伝えてから始めますが、時にはあえて「これ、どうやって使うと思う?」と問いかけ、子ども自身に考えてもらうこともあるといいます。
そうすることで子どもならではの自由な発想や思いがけない使い方が生まれ、スタッフもそのアイデアを大切に受け止めながら一緒に楽しむことで、主体性や創造性を育む関わりを意識しています。
道具と言葉がけで芽生える子どもたちの成長

職員が寄り添い、一人ひとりの挑戦を支えます
手先を使うグッズなどを活用し、紙をちぎる・道具を使うといった動作をスモールステップで経験することで、巧緻性の向上だけでなく「できた」という成功体験が積み重なり、苦手意識の軽減や意欲向上につながっています。

体を動かす活動も。できることが増えると意欲につながります
職員さんが印象的なエピソードとして語ってくれたのが、日々の支援で見られる子どもたちの変化です。
たとえば、最初は大きくしかちぎれなかった紙が、少しずつ細かくちぎれるようになった時のこと。その子は嬉しそうな笑顔で職員さんの顔を見つめてくれたといいます。言葉はなくとも、子ども自身が「できた!」という達成感を噛みしめていることが真っ直ぐ伝わってくる瞬間でした。
また、お箸への苦手意識が強い子が集中してポンポンを5つ入れられた際には、職員さんが「5個も入れられたね!」と声をかけたそうです。その一言でさらに自信がついたのか、その後も集中を切らさずに取り組み続ける姿が見られました。

ぽっくり歩きに挑戦。少しずつ段階を踏んで練習します
単に道具を使うだけでなく、達成感を味わえるような言葉がけを組み合わせる。それが、子どもたちの成長や変化へとつながっていきます。
家庭へ広がる笑顔と、夢門塾相生が目指す療育

できた!」の達成感が、次への意欲につながります
保護者の方々へのフィードバック時に実際のグッズを見せると「どうやって作るの?」「家でもやってみたい」と興味を持たれ、実際に子どもと一緒に楽しんでいるという声をもらうこともあるといいます。事業所での工夫が、家庭での療育や関わりを支える一助となっているようです。
一人ひとりの個性や可能性を大切にし、それぞれの発達や特性に寄り添う夢門塾相生。「できた!」「やってみたい」という気持ちを育み、子どもたちがこの先も自信を持って歩んでいける療育を目指して、これからも工夫を重ねながら支援を続けていきます。




